2022/03/19 10:40
〈作り手について〉
作り手としてお伝えするべきは生産者の皆さんですが、「献上煎茶 鳳凰(ほうおう)」はその開発経緯から、曽祖父の繁田百鑒斎(ひゃっかんさい)を紹介します。
百鑒齋50歳の頃/繁田百鑒斎(1882~1955)
昭和3年(1928年)、百鑒斎(当時46歳)は宮内省より赤坂離宮御苑内にある茶園の管理を任され「鳳苑(ほうえん)」という煎茶を謹製しました。
しかし「鳳苑」は宮内省御用達の製品であり、世間一般のお客様へお届けすることができません。
そこで、百鑒斎は自園の茶葉を「鳳苑」と同じ製造方法によって商品に仕上げ、これを「鳳凰(ほうおう)」と名付け、商品化しました。
同時期に百鑒斎は、礼儀作法を重視した当時の「茶」の世界における形式主義に対して反発していたとの記録も。
そして、もっとシンプルに日常生活における〈美味しいお茶を飲むこと〉にこだわるべき、という考えのもと「新茶道」を提唱しました。
繁田園は1893年 米国シカゴ万博、1900年 仏国パリ万博へ日本茶を出品し、大賞牌を受賞。
百鑒斎は「新茶道」を流布すべく、海外を視野に入れた活動へ積極的に取り組みました。百鑒斎から「ウマいお茶を先につくれ!能書きは後だ!」と怒鳴られそうですが、以下、商品のご紹介にしばしお付き合いください
〈商品について〉
「献上煎茶 鳳凰」の最大の特徴は、百鑒斎が「新茶道」において美味しいお茶の最も重要な構成要素とした「香り」にあります。
百鑒斎は、その香りのなかでもとくに「天然優良香における本質香(ほんしつこう)」を重視しました。
ただし、この「本質香」は決して強くインパクトのある香気(こうき)ではありません。
というのは、この「本質香」とは、高品質な茶葉原料だけに元来から備わっている「青く清々しい天然由来の香り」にあたります。
そのため、煎茶の製造過程で意図的に付加される「覆い香や火入香に代表される人工優良香」と比較すると、繊細かつ微弱な香気なのです。
昭和26年7月7日『茶の肇』に百鑒斎が寄稿した「香気(こうき)の考え方と分類について」
一般的に、煎茶は蒸し具合によっても分類されます。
本商品は「本質香」を最大限に引き出すために浅蒸しの製法を採用しているため、水色(すいしょく)は濃く鮮やかな緑色ではなく、薄く澄んだ黄緑色に抽出されます。
百鑒斎が興した雲仙焼の湯呑み(自作)に注いだ「献上煎茶 鳳凰」
濃厚な味わいと鮮やかな緑色の水色が特徴的な深蒸し煎茶は、広く流通しています。
その一方で、東京繁田園に引き継がれる「美味しいお茶とは?」へのひとつの答えは「味や色よりもまず香り」、「とりわけその天然由来の香りを大切にし、味わいとの絶妙な調和を生み出すこと」だといえます。
そして「献上煎茶 鳳凰」は、この考えを最も強く反映した商品です。
〈モノづくりについて〉
販売・製造責任としての「トレーサビリティ」(その製品がいつ、どこで、誰によって作られたのか、を把握する)は〈モノづくり〉の原則です。
現在では、よりポジティブな「商品の魅力」としての「シングルオリジン」(単一農園・単一品種)が各分野で打ち出されています。
それに対して「献上煎茶 鳳凰」は、「合組茶(ごうぐみちゃ)」。
いわゆる複数の農家・生産者の茶葉を当店独自にブレンドした商品です。
この対比だけをみると、合組茶(ブレンド)は世の中のトレンドと合致しません。
しかし両者の目的は同じです。
それは、日常生活において「ウマい!お茶」を楽しんでいただくことへお役立ちすること。
そのために、
・全国の茶畑へ自ら足を運び、作り手の皆さんと直接コミュニケーションし、生産者の顔の見える良質な茶葉を仕入れる
・目利きを磨き、合組(=混ぜるではなく、組み立てること)により、お客様へ適品適価で商品をお届けする
当店では現在まで引き継がれたアプローチにより、引き続き日本茶専門店ならではの〈お茶づくり〉に取り組んでまいります。
「献上煎茶 鳳凰」の原料は契約農家さんによる手摘みのお茶&全国茶品評会の優良茶を使用
父は日本茶の審査技術を競う全国大会にて準優勝(2位)を獲得
母も日本茶インストラクターとして20年近く活動を続けています
私自身も日本茶インストラクターの資格を取得。二十歳の頃には東京都の審査競技会に参加。
*お茶屋(百鑒斎)のDNAは引き継がれているよう(と信じたい)です
新卒から20年間は別の仕事をしており、40歳を超えて学び直しの日々です。
色々と申し上げてしまいましたが、まずは、「献上煎茶 鳳凰」の一杯にて、先人から続く、当店の信じる「ウマいお茶!」をお試しいただけますと幸いです。