スタッフブログ

2021/09/22 22:11



この「映えない」缶は、物心ついた頃から実家にある海苔の缶です。
三代目の物心がついた頃にすでにあったとのことなので、おそらく40年以上前からあるのかもしれません。
東京繁田園では、この缶に海苔を入れて販売していた時期がありました。

ここでお茶と海苔の商店に生まれた子どもの美味しい(悲しい)習性について紹介させてください。

「パブロフの犬」をご存知でしょうか。
ロシアの生理学者イワン・パブロフが行った、犬の条件反射の実験結果から名付けられた言葉です。
20世紀初頭、パブロフは犬にある条件(刺激)を示すと、その条件に対して特定の反応をすることを発見しました。
パブロフが犬の頬に管を通し、食事を与えた時に分泌する唾液量を測定していた時、助手の足音を聞いただけで犬の唾液量が増えていることを偶然発見しました。彼は「犬は助手の足音がすると、食事の時間だと認識しているのではないか」と仮説を立てます。
その仮説を証明するために、パブロフは最初にベルを鳴らして(条件)、その後に食事を与える順番で実験を行いました。
これを繰り返していくと「ベルが鳴ったら食事がもらえる」と犬は認識するようになり、やがてベルが鳴っただけで涎を垂らすようになりました。これがパブロフの犬と呼ばれる条件反射です。
後天的に備わる条件反射のことで、レモンや梅干しを見ただけで体が反応して唾液が出てくるといったことと同じ現象だそうです。(私はスギの木が花粉を振りまいている映像を見るだけでくしゃみが出たりもしますが、おそらくこれも同じ類のことかと思います。)

少し前置きが長くなりましたが、この缶を見るだけで(条件)、我が家の姪たちは即座に手を伸ばして大人にアピール(反射)していました。「その缶の中に入っている海苔をくれ」と。
缶の中には当店の海苔(詰め替えて使用)が入っています。言葉もままならない状態の子どもが、海苔の旨みを認識し、青い缶を見ただけで立ち上がってアピールする光景を見て、これが我が家のパブロフの海苔、、犬だと思った瞬間でした。笑っている私に母は言いました。「あなたも同じだったわよ」と。
赤ん坊の味覚は大人より優れており、酸っぱいものは腐っていると認識し、苦いものは毒のシグナルだと感じ受けつけないといわれます。海苔の栄養と旨みを認識して求める姿に、この海苔は本能で求められている味なんだと確信しました。

ここ数年で、コンビニの海苔も美味しくなったと思います。昔カスカスだったサンドイッチがしっとりしてきたように、おにぎりの海苔もパリッとして、風味も感じられます。ただ、あの海苔を食べたい、あの海苔でおにぎりが食べたい、と強く思うのは、やはり子どもの頃から食卓の片隅にあった「あの青の缶に入った海苔」です。食べ慣れた味だからかもしれませんが、ぜひ一度食べてみていただきたいのです。赤ん坊が手を伸ばして食べたいと反応する、この海苔を。
あなたも海苔のパッケージを見ただけで立ち上がりたくなる日がくるかもしれませんよ。笑


(外国製のたった5分で炊ける謎の炊飯器で炊いた米でさえ、旨みで包み込んでくれる繁田の海苔)